京都造形芸術大学 卒業式に寄せて

卒業される皆さんへ

本日卒業式ですね。例年通りなら謝恩会に出席して卒制がどうだったとか、進路がどうなったとかいろんな話をして、皆さんの今後の活動にエールを送っていたと思うのですが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から卒業式は縮小、謝恩会は中止になってしまいました。非常勤講師は学内立入不可とのことで、4年間(あるいは6年間)の活動を見てきた皆さんと不本意な形でのお別れになります。

今、多くの美術館・博物館が休館し、美術・音楽・演劇などの文化イベントも中止しているなかで、皆さんが学んできた美術というものが、人類の生命維持活動に直接的には不要であり緊急時には無力であるということを痛感した方もいると思います。
似たような無力さを僕は大学院在学中の2011年に味わいました。東日本大震災が発生し多くの方が被害に遭われ、不安と恐怖、悲壮感が日本全体を覆いました。美術に限らず多くの行事が中止になり被災地以外でも必要以上の自粛ムードの中であらゆることが停滞していたように思います。僕自身は被害の無い地域で、何かできることはないかと模索し制作を続けながらも、絵を描くことが一体何の為になるのかという暗い気持ちで過ごしていました。
一方で、震災直後から多くの作家がインターネット上で作品を公開したり、作品売り上げの一部を寄付したり、それぞれのできる形で被災地に寄り添おうとする姿が見られました。また、時間が経つにつれて、被災地の現状やそこで暮らす人々の様子や想い、あるいは今も残る多くの問題を、作品を通して目にする機会も増えていきました。
美術は、即効性の高い薬とは違って直接人の命を救うためのものではありません。苦境の最中にいる人にとっては必要ではないかもしれません。ですが、苦境を超えた先の傷ついた心を癒してくれる、あるいは事実や教訓を形にして後世に伝えていく、「その後」の人々の暮らしをつくるために必要な希望に満ちたものだと思います。

皆さんはこれからそれぞれの仕事や生活の中で今の状況を乗り越えていくことになると思います。その中で、苦しんでいる人に寄り添える想像力を持ち、自分が苦しい時には寄り添ってくれるものを見つけていってください。力になれるかわかりませんが、困ったときは先生を頼ってください。

直接伝えられないのが残念ですが、卒業おめでとうございます。
これからは同じ道を通った仲間として一緒に頑張っていきましょう。
皆さんの健康と幸せを願います。

佐竹龍蔵